天草 (てんぐさ/テングサ) ＜乾燥＞

ところてんや寒天の原料として知られる天草（てんぐさ）は、ビタミンK、ビタミンB2、葉酸などのビタミン類に加え、カリウムや鉄などのミネラルを豊富に含んでいます。栄養成分の構成では、炭水化物の中でも特に食物繊維の割合が高く、独特の海藻特有の香りを持つのが特徴です。乾燥状態では茶色がかった色をしていますが、水に戻して加熱処理を行うことで、透明感のある寒天やところてんとして利用できます。天草由来の製品は昔から日本の食文化に根付いており、和菓子や涼味料理の材料としても広く用いられています。さらに、天草は寒天の品質や食感に影響を与えるため、製品ごとに異なる産地や加工方法が使われることがあります。

なお、「天草（テングサ）」という名前の特定の単一種は学術的には存在せず、寒天などの製造に使われる紅藻類の複数種をまとめて「テングサ」と総称しています。代表的な種にはオゴノリ科のオニテングサ、マクサ、フトオゴノリなどがあり、用途や品質に応じて使用されます。地域や季節によって採れる種や品質が異なるため、寒天の風味や食感も若干変化します。また、天草の品質は水揚げ時の処理や乾燥方法でも左右され、製品の透明度や弾力にも影響します。

天草は古くから天日干しによる自然乾燥が行われ、全国各地の漁師や加工業者によって製造されています。特に伊豆諸島、紀伊半島沿岸、四国地方などは高品質な天草の産地として知られています。天草はそのまま煮出してところてんとして食べる以外にも、寒天として冷菓や料理の固め剤、実験用や工業用途など幅広い用途で活用されており、非常に汎用性の高い海藻加工原料です。さらに近年では、加工技術の向上により、食感や透明度を安定させた高品質製品が多く流通しています。