イワナ (いわな/岩魚)

河川の上流域に生息するイワナは、北海道から本州にかけて広く分布している淡水魚です。日本ではニッコウイワナ、ヤマトイワナ、エゾイワナ（アメマス）、ゴギの4亜種に分類され、地域によっては亜種同士が交雑したハイブリッドも確認されています。オショロコマもイワナの仲間として扱われることがありますが、正確にはイワナの近縁種でありサケ類に近い性質を持っています。
イワナの生態は多様で、成長とともに海へ下る降海型、淡水域に留まる河川残留型、河川と海を往復する遡河回遊型の3つのタイプに分けられます。このような多様性は環境への適応力の高さを示しており、地域ごとに異なる姿を見せます。
食用としてのイワナは、釣ったその場で塩焼きにして味わうのが最も親しまれている方法です。ほかにもムニエルや甘露煮、天ぷらや唐揚げなど、さまざまな調理法に適しており、食卓に変化を与えてくれます。また、下処理したイワナを焼き干しにして器に入れ、酒を注いで楽しむ「岩魚の骨酒」は古くから伝わる独特の味わい方で、大人の嗜みとして知られています。
さらに、イワナは淡泊な身質を活かしてスモークやマリネにも利用され、特にスモークイワナは深みのある風味が人気です。加工や調理の方法によって多彩な味わいを引き出せる魚であり、地域の郷土料理にも取り入れられています。
イワナは清流に生息するため、日本の自然環境や水質を示す指標とされることも多く、食材としてだけでなく自然と人との関わりを象徴する魚といえます。