全粒粉 (ぜんりゅうふん)

全粒粉は小麦粉の一種ですが、一般的な小麦粉が小麦の胚乳だけを使用しているのに対し、全粒粉は小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものです。そのため色は茶褐色で、通常の小麦粉に比べて香ばしく、やや歯ごたえのある仕上がりになります。小麦粉は製粉の過程で表皮や胚芽を取り除くため白くなりますが、全粒粉はそれらを含むため風味や食感が大きく異なります。

全粒粉には、ビタミンやミネラル、食物繊維、ポリフェノールなどの成分が多く含まれています。特にビタミンB1、鉄分、食物繊維の含有量は精製小麦粉と比較しておよそ3倍といわれています。栄養素を幅広く摂取できる点が特徴であり、香ばしさと栄養価の高さを両立した食材として注目されています。

用途としてはパンに使われることが多いですが、それ以外にもクッキー、マフィン、クラッカー、パスタなど幅広い料理に利用されています。全粒粉特有の風味や食感を活かすため、全粒粉のみで作るレシピのほか、小麦粉と配合して扱いやすさや口当たりを調整する方法も一般的です。特にパンでは、小麦粉と全粒粉をブレンドすることで香ばしさを保ちながら、ふっくらとした食感を出す工夫がされています。

全粒粉とよく比較されるものに「グラハム粉」があります。両者は混同されがちですが、製法が異なります。グラハム粉は小麦をいったん表皮、胚芽、胚乳に分け、胚乳を細かく挽いた後、粗く挽いた表皮と胚芽を混ぜ合わせて作ります。このため、グラハム粉は全粒粉より粒が大きく、ややザラついた質感があり、パンやクラッカーに加工すると独特の食感が生まれます。

全粒粉やグラハム粉は、精製小麦粉とは異なる風味と食感を持つため、料理に取り入れることでバリエーション豊かな仕上がりを楽しむことができます。特に素朴で香ばしい香りや噛み応えを活かしたレシピは、自然派の食材として人気が高まっています。