茶飯 (ちゃめし)

茶飯は、各地に伝わる郷土料理のひとつで、地域ごとに使用する茶の種類や調理法が異なります。基本的にはお茶を使ってご飯を炊き上げる料理で、香りや風味を楽しむのが特徴です。昔から家庭や寺院で親しまれており、素朴ながらも奥行きのある味わいを持っています。

代表的なものとして、奈良県の「奈良茶飯」が挙げられます。ほうじ茶を濃く煮だして米と一緒に炊き込み、塩や醤油で調味するのが一般的です。香ばしいほうじ茶の風味がご飯に染み込み、独特の味わいになります。静岡県では煎茶を用いた茶飯が知られており、茶どころならではの香り高い仕上がりが楽しめます。他にも、昆布やかつお節のだしを合わせたり、めんつゆを加えて風味を整えるなど、各地で工夫が凝らされています。

茶飯は、仏事の際に供されることが多く、祝い事に用いられる赤飯とは対照的な位置づけを持っています。しかし、その香ばしさや食べやすさから、日常的に作られることも少なくなく、家庭料理としても広がりを見せています。

ご飯に使うお茶の種類によっても味わいが大きく変わります。ほうじ茶は香ばしくあっさりした仕上がりになり、煎茶は清涼感のある風味を加えます。地域の特色や家庭の好みによって選ばれるお茶が異なるため、同じ「茶飯」でもさまざまな表情を持つ料理といえます。

茶飯は、食文化の中でお茶を料理に活かす知恵が詰まった一品です。素朴ながらもお茶の持つ香りを堪能できるため、地域ごとの違いを楽しみながら味わってみるのもおすすめです。