呉汁 (ごじる/ご汁)

水に浸して柔らかく戻した大豆をすり潰して味噌汁に加えた料理を「呉汁」といいます。ペースト状にした大豆は「呉（ご）」と呼ばれ、呉汁はその呉を入れた味噌汁という意味です。
日本各地には独自の呉汁のレシピが存在し、古くから郷土料理として受け継がれてきました。地域によって具材や作り方が異なり、大豆だけでなく枝豆をすり潰して作る「青呉汁」や「ずんだ汁」、あるいは枝豆呉汁と呼ばれるバリエーションも見られます。
調理の際は、すり鉢やすりこぎを用いて手作業で丁寧にすり潰す方法もありますが、現代ではミキサーを使用すると短時間でなめらかなペーストを作ることができます。また、手軽に楽しむ方法として大豆の絞りカスである「おから」や豆乳を使った呉汁のレシピも広く知られています。
具材の組み合わせも多彩で、大豆とネギだけで仕上げる素朴なものから、なす・大根・ニンジンといった根菜類、豚肉や鶏肉などの動物性食材、さらにキノコ類を加えることで、味わいと食感に奥行きを出すことができます。これにより、日常の食卓で食べやすい軽い味わいから、寒い時期に好まれる食べ応えのある一椀まで、幅広い楽しみ方が可能です。
また、呉汁は日本の食文化において、米や味噌と並んで大豆を無駄なく活用する知恵の一つでもあります。大豆そのものにはたんぱく質をはじめ炭水化物、脂質などさまざまな栄養素が含まれており、これらを汁物として日常的に取り入れる工夫が古くから行われてきたのです。
現代でも家庭料理として親しまれており、給食や家庭の献立に登場することもあります。シンプルながらもアレンジの幅が広い呉汁は、昔ながらの素朴さと現代的な調理法の両方で楽しめる料理といえます。