月餅 (げっぺい)

月餅は中国を代表する伝統的なお菓子で、中秋節の行事食として古くから親しまれてきました。中秋節は旧暦8月15日の満月を祝う行事であり、家族が集まって月を眺めながら月餅を分け合う風習があります。現在一般的に見られる丸い型は満月を象徴し、「団円」という一家団欒や円満を意味する言葉に結びつけられています。そのため、月餅は単なる菓子というだけでなく、人と人とのつながりを示す象徴的な存在でもあります。日本では横浜や神戸の中華街を中心に通年販売され、季節を問わず楽しむことができます。
月餅は小麦粉で作られた皮の中に餡を詰めた菓子ですが、和菓子の饅頭と異なる点は、餡に松の実などのナッツ類や胡麻油などの油脂類が加えられていることです。これによりコクが増し、濃厚な味わいに仕上がります。さらに卵黄を塩漬けにした「塩卵黄」を中央に入れるものもあり、甘味と塩味の対比が独特の風味を生み出します。和菓子と比べると脂肪分が多く、カロリーが高めである点も特徴です。

月餅の皮は薄めでしっとりとした食感が多く、中身の餡が主役となります。餡には黒胡麻を練り込んだものや白餡、栗の実を加えたものなどの定番があるほか、ヒマワリの種やナツメ、クルミなど多彩な素材を組み合わせた種類もあります。また、近年はフルーツやチョコレートを取り入れたアレンジ商品や、焼き上げるのではなく冷やして固める「スノースキン月餅」と呼ばれる新しいタイプも登場し、バリエーションは年々広がっています。このように月餅は古典的な菓子でありながら、時代や地域ごとの工夫が凝らされ、多様な味わいを楽しめる菓子として現在も受け継がれています。