粕汁 (カス汁/かす汁/酒粕汁)

粕汁（かすじる）は、日本酒を製造する過程で生じる酒粕（さけかす）を加えて煮込む、日本の伝統的な汁物料理です。特に酒蔵が多い関西地方を中心に、寒い冬に親しまれる代表的な郷土料理の一つです。地域や家庭によって具材や味付けに多様なバリエーションがあります。

基本的な作り方は、かつおや昆布などで取った出汁（だし）に酒粕を溶かし入れ、味噌や醤油で味を調える方法です。酒粕は米の風味と独特の甘み、芳醇な香りを汁物に加え、深みのある味わいを作り出します。出汁との相性も良く、短時間の加熱で香りや風味を損なわずに楽しめます。

具材は魚介、肉、根菜、豆腐、油揚げ、こんにゃくなどさまざまです。魚介では鮭や鰤（ブリ）の切り身やアラが用いられることが多く、旨味を汁全体に広げます。地域によっては豚肉を加えることもあります。根菜類は大根、人参、ごぼう、里芋などが定番で、煮込むことで柔らかくなり、酒粕の風味とよく調和します。

酒粕にはたんぱく質、食物繊維、ビタミンB群（B1、B2、B6など）、ナイアシン、パントテン酸、アミノ酸、レジスタントプロテインなど多くの栄養素が含まれます。ビタミンB群はエネルギー代謝を助ける栄養素として知られ、食物繊維は料理の食感にも寄与します。これらの成分は粕汁の具材や出汁と組み合わせることで、味わいの複雑さや風味の豊かさを引き立てます。

粕汁は、寒い季節に手軽に楽しめる汁物として、家庭料理の定番です。地域や家庭ごとの工夫により、旬の食材や保存食材を取り入れた多彩なレシピが存在し、和食の伝統を感じながら、さまざまな味わいを楽しむことができます。